オロナミンCのCMでも知られる、93歳の現在も「元気ハツラツ」な大村崑さん。笑顔の裏にある、少年時代の壮絶な体験を語る。

 親父に肩車をしてもらい、親父の頭のてっぺんに手を置いて眺めた神戸・新開地の歓楽街。劇場や映画館、飲食店が立ち並んで、大勢の人で賑わっていて。この風景が、僕の子どもの頃の最初の記憶なんですよ。その親父が腸チフスに罹って1941年の元日に急死してしまった。9歳だった僕は神戸市内に住む親父の長兄夫婦に、すぐ下の妹は母の妹に引き取られ、末っ子の妹だけは母が育てることになりました。僕には一家離散の悲しみと太平洋戦争がいっぺんにやって来たんです。

Ⓒ石田寛

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source : 週刊文春 2025年8月14日・21日号