まだ創業期の頃に新卒で入社してくれたI君が結婚する時、自分にも親心が芽生えたのか、熱心に説得したことがある。大学のサークルで出会った同級生の彼女と結婚するという彼は、お相手を「アカギ(仮名)」と苗字の呼び捨てで呼んでいて、慣れてるから結婚後もそれは変えないつもりだという。「下の名前で呼びなよ」「最初は照れくさいだろうけど、すぐ慣れるよ」。そんな風に言ったんだけど、かたくなに変えないと言い張る。彼女の実家に行った時も、「アカギ」と呼んだら義父も義母も家族全員が振り向いたとか。それでは支障もあろうと心配になった私は、親族も集まった彼らの結婚式のスピーチで、敢えてその話に触れた。

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source : 週刊文春 2025年9月11日号