声から始まった。
劇団の養成所で落ちこぼれ、客の入らぬ舞台をやり、一言の台詞でカメラの前にも立ったりしていたが、見事に転がらぬ役者稼業。暗黒の20代。否、そんなカッコイイものではない。どん底の……と言う程ハードボイルドでもない。えっと……そう、ポンコツの20代。ガリガリがフラフラと東京でつまずき続けていたのである。
そんな中、ある日、突然アニメの仕事。最初に認知して貰ったのは声だった。そこから30年。30年? え? 30年? いつの間に? 随分長い間声優をやらせて貰っている。その間、『遊☆戯☆王デュエルモンスターズ』の海馬瀬人だったり、『テニスの王子様』の乾貞治だったり、近年の作品で言えば、『ゴールデンカムイ』の尾形百之助だったり、『呪術廻戦』の七海建人だったり。様々なアニメ作品や洋画の吹替作品のお陰で声優として少しは名前を知って貰えた気もする。
最近では俳優としてもドラマや映画に参加させて頂いている。ありがたや。
自己紹介では「声優、俳優の津田健次郎です」と名乗るのだが、しかし、それはあくまで肩書きの話で、自分の中ではこの二つを切り分けた事は無い。どちらもまぁ「役者」という大きな括りの中のジャンルの違いに過ぎぬ。
勿論細かくは色々違うのだが、演じるという事では同じ。三毛猫とペルシャ猫の違いのようなものだ。三毛猫は三毛猫で親しみやすさがあるにも拘わらず儘ならぬ所が可愛いし、ペルシャはペルシャで気位が高いのかと思いきや意外に甘えてきたりして可愛い。
つまり、どっちも可愛いのだ。猫は可愛い。猫の可愛さの要素の一つとして、昔飼っていた猫ちゃんの……猫ちゃんの話はさておき、要は声優、俳優として色々演じさせて貰ってありがたやという事だ。
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source : 週刊文春 2025年10月9日号






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