(1952年、山形県米沢市生まれ。73年、漫画家デビュー。97年、『アタゴオル玉手箱』で日本漫画家協会賞大賞を受賞。2001年、宮沢賢治作品の漫画化などの業績によって宮沢賢治学会イーハトーブ賞を受賞。また、画集『ゴッホ型猫の目時計』、『ますむらひろし北斎画集』などもある。)

一昨年、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の自身3度目の漫画化を8年がかりで完結させました。最初の構想からは約40年。我ながらしつこいなあと思いますが(笑)、描くたびに疑問と発見の繰り返しで……でも今度こそ描き上げた、という思いです。で、今取り掛かっているのが、同じく賢治による童話『グスコーブドリの伝記』。こちらも漫画化は2度目です。難しいテーマを含んだ物語なので、日々試行錯誤しながら描き進めています。まさに、ライフワークですよ。
異才の漫画家、ますむらひろしさん。72歳となった現在も、千葉県野田市にある自宅の仕事部屋で過ごす時間は長いという。一方、緑があおあおと茂った広い庭では、3匹の猫たちがのびのび過ごしている。
猫との付き合いも長くなりましたね。これまでに飼ったのは30匹以上。今の家も、猫たちが過ごしやすい環境であれ、と常に思っています。歴代の飼い猫も庭で眠っていますしね。
そんなますむらさんが描くキャラクターは、多くが猫の姿であることで知られている。だから、ジョバンニもカンパネルラも猫。さらに代表作である異世界ファンタジー「アタゴオル」シリーズの主人公・ヒデヨシも猫だ。彼はアタゴオルの森に住んでいる。
「アタゴオル」の名前の由来は、このシリーズを描き始めた当時住んでいたアパートの最寄駅、東武鉄道野田線の「愛宕」駅です。その森がある「ヨネザアド王国」は、生まれ育った山形県「米沢」市から。また米沢には愛宕山もある。つまり、宮沢賢治が物語の舞台「イーハトーブ」を、自分の故郷の「岩手」から付けたのと同じ発想なんです。
でも、賢治が生涯のほとんどを岩手で過ごしたのと違って、私の場合は18歳で米沢を離れています。同時期に実家が人手に渡ってしまったので、帰ろうにも帰る家がなかった。だからこそ、米沢は特別な場所になりました。そして、故郷に近しい東北の空気感を持つ賢治の存在もまた――。
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source : 週刊文春 2025年10月9日号






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