小学校からの帰り道、どこまでも続くような一本道の長い坂の上から見える景色が大好きだった。空に浮かび上がって見える古墳頂上にめぐらされている埴輪のオレンジ色に、向こう岸の淡路島へと続く明石海峡大橋、陽光を受けて眩しいほどにキラキラと輝く海面。空気はいつも潮の香りに満ちていて、春はそこに家々の炊くいかなごのくぎ煮の匂いが足される。『転がる姉弟』を読んでいると、なぜかその景色と香りが強烈に思い出されて里心ついてたまらない。でもきっと、今同じ景色を見てもあの頃のように鮮やかには感じないのだろうな。
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source : 週刊文春 2025年10月9日号






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