猛暑が記憶に新しい中、急な冷え込みに戸惑う読者も多いだろう。秋風に運ばれ急拡大するインフルエンザの危険に、高齢者の命は晒されている。予防接種の最適時期から生活&食事術まで、ウイルス撃退術を実行しよう。 

 

●高齢者は発症後12時間ルールを無視せよ

●命にかかわる3大合併症とは?

●予防接種で死亡確率8割減

●かぼちゃ、みかん、うなぎの効能

 

◾️下方浩史教授の「90歳まで健康長寿」

初回 血管を柔らかくする

前回 乳がん 意外と知らない7大リスク

「今年は昨年より1カ月以上も早く、インフルエンザの流行期に入っています。H3N2型と呼ばれるインフルエンザA型の亜種などで、突然の高熱や倦怠感、関節の痛みなどの症状が出てきたら要注意。最悪の場合、高齢者は落命する恐れもあります」

流行中のH3N2型

 そう警告するのは、老年科専門医で、名古屋学芸大学大学院栄養科学研究科の下方浩史教授である。

 これまで、40年以上に渡って、老年病(高血圧症や糖尿病、動脈硬化などを指す)の研究を続けてきた。

 

 厚生労働省の報告によれば、2025年10月20〜26日の罹患者数は全国で2万4276人だった。

「前週、10月13〜19日は約1万2000人でしたので、1週間で倍増。急速に拡大しています。流行の背景には、猛暑からの急な冷え込みによる体調悪化や、空気の乾燥によりウイルスが飛散しやすい環境が整ったことなどが挙げられます。年末にかけて感染者はさらに増え続けることが予測されますので、早期の対策が急務です」

 一般的に、インフルエンザは発症後1週間から10日程度で自然治癒する。ただしこれは、子どもや若い健常世代のこと。

 下方教授は、免疫力の低下した高齢者に注意を促す。

「インフルエンザ自体の重症化も懸念されますが、直接的な死因となることは多くない。シニアにとってさらに怖いのは、インフルエンザの合併症です。直接的・間接的を問わず、インフルエンザの流行がなければ回避できたであろう死亡者数(超過死亡)は、厚労省の推計では例年約1万人にのぼります。米国CDC(疾病予防管理センター)によれば、季節性インフルエンザが関連する死亡者(超過死亡)の70〜80%が65歳以上の高齢者だったという報告もあります」

 そこで、「90歳まで健康長寿」を目指すシニアのために、インフルエンザから命を守る6つの撃退術を紹介してゆく。

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source : 週刊文春 2025年11月13日号