(かじめいこ/1947年、東京都生まれ。65年スカウトにより日活映画『青い果実』で主演デビュー。以来、多くの映画、ドラマで活躍。歌手としては「怨み節」で、日本有線大賞優秀賞受賞。今年、60周年記念コンサートを開催(11月28日追加公演を予定している)。著書に『真実』(小社刊)。)

先月、ロサンゼルスで30年続く全米の映画ファンによる映画祭「ビヨンドフェス」に招かれて行ってきました。そこで私の主演作「女囚さそり」シリーズ、『修羅雪姫』正続編、「野良猫ロック」シリーズが3夜連続で上映されたんです。しかも、『ANORA/アノーラ』で去年のアカデミー賞5冠のショーン・ベイカー監督による司会で。国籍も世代も超えた観客に囲まれて大感激でした。すると、2日目の舞台挨拶中にショーンさんから「(「さそり」シリーズ主題歌の)『怨み節』を歌って」という無茶ぶりが! 素敵な場に呼んでいただいたお礼だと思ってアカペラで独唱させていただいたのですが、会場は大興奮。スマホで動画を撮っている人も多かったから、思わぬ世界配信になってしまいました(笑)。
今年デビュー60周年を迎えた女優で歌手の梶芽衣子さん。そのクールな容貌とワイルドな演技は、日本だけでなく世界の著名監督たちにも熱烈に愛されており、今も人気は拡大中。そんな長いキャリアの中には、いくつかの転機があった。
クールでワイルドな人気女優は、静かな書斎で1人の読書がお好き!
東京は神田の生まれです。父は和食の料理人。英語ができたことから、ハワイ、ラスベガス、ニューヨークなどで仕事をしていました。母は、私、4歳下の妹、さらに2歳下の弟と、幼い3人の子どもがいたので日本に残っていたのですが、父は内心一緒に来てほしかったようで、アメリカからいろいろ珍しいものを送ってきてアピールしていたことを覚えています(笑)。帰国後もずっと好きな料理関係の仕事をしていた人でした。そんな父の道を継いだのが弟で、やっぱり海外で料理の仕事を続けています。
一方、私は17歳で映画の世界へ――。高校生の時、モデルとしてスカウトされたのがきっかけでした。最初はアルバイト感覚だったのに、気づけば日活撮影所専属の女優として大忙しの日々を送ることに。当時は月8本も映画が作られていた時代。同じ頃に日活入りした渡哲也さんと私は、医務室の常連。そこには2つベッドが置いてあったので、撮影の合間に、仮眠を取りにいっていたんです。それくらい忙しかった!
それでも映画界は斜陽期で……もし日活がなくなったら自分のこれまでのキャリアが消えてしまうんじゃないかと、私も不安を覚え始めていました。そんな暗い気持ちをぶっ飛ばそうと作られたのが、1970年のアクション映画「野良猫ロック」シリーズでした。私は黒い帽子をかぶった非行少女役で、それこそビヨンドフェスで若者に大人気の作品でしたが、新宿の地下街をバギーで疾走する場面なんか、今見てもすごい。撮影本番、助手席に座ってる私にはナイショのまま、藤竜也さんの運転で人のいる地下道を突っ走る(笑)。あれは、明日をも知れない若き映画人の、滾る思いが伝わってくる現場でした。
でも結局、翌年に日活は方針転換。これを受けて私もフリーになることを決めました。それなら、一度はしてみたいと思っていた一人暮らしをする良いチャンスと、港区の麻布に個人事務所兼自宅を構えることに。もともと1人の時間が好きだったし、女優業って物理的にも心理的にも人と密に関わり合う仕事。だからオフではなるべく1人で過ごしたかったんです。そこで素敵な一人暮らしを満喫出来る居心地の良い部屋を探しました。その物件は、6階建最上階の角部屋で3LDK。玄関入って振り分けタイプの八畳二部屋は、事務所兼書斎と寝室に。リビングの隣の和室は衣装部屋。ベランダに面したリビングにはテレビやオーディオなどを置いていました。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
-
月額プラン
1カ月更新
2,200円/月
初回登録は初月300円
-
年額プラン
22,000円一括払い・1年更新
1,833円/月
-
3年プラン
59,400円一括払い、3年更新
1,650円/月
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2025年11月27日号






お気に入り記事