「自分達で最強の都市伝説を作りませんか」

　うだるような夏の日に担当編集さんが提案してきたのは、そんなことだった。

「最強の都市伝説？」

「最近、ネットロア――インターネットの都市伝説ってやつですね。ああいうのを解明するモキュメンタリーとか、ドキュメンタリーとか、そういうのが流行っているじゃないですか。ああいうのって、調べる側の根気とか、裏で後付けするストーリーのセンスが問われるんですよね」

「言わんとしていることは分かりますが」

　私はいくつかのベストセラー作品を思い出しながら答える。ああいった話は、誰もが知っているような都市伝説や伝承、妖怪の類(たぐ)いなんかに現代的な意味を付け加えて新たな面白みを生み出す作品が多い。私もキリスト教の聖女伝説と現代的な呪いの話を組み合わせた小説や、妖怪とネットロアを組み合わせた小説を発表したことがあった。