
精神が安定すると、小説が書けなくなるのではないか。
異常な危惧のようにも思えるが、これまで少なくない数の作家の頭をよぎった考えであると思う。日本だけでなく、世界じゅうの作家の頭を。
特に悩みが深かったり、幼いころからのトラウマがあったり、生活が荒れていたり、ままならぬ恋に苦しんでいたり。そんな辛い思いのエッセンスを交じえた、またはそのエッセンスのみで書ききった小説がデビュー作の作家は、2冊、3冊と本を書き上げていくなかで、上記のような考えが頭をよぎる可能性は高い。
小説を書く原動力は作家によって様々で、女体への激しい執着を芸術に昇華させる人もいれば、政治についての思想を色んな題材に落とし込んで表現する人もいる。医者とか会社員とか、作家以外の職業に就いていた経験を生かして作品に仕上げる人もいるし、(トリックを考えるのが本当に好きなんだな)と驚嘆するような推理作家もいる。
これが好きだ、これについてもっと書きたい、と“好き”を原動力にして作品を生み出し続けるタイプは、作家のみならず、職業全般の理想的なタイプとして、近年社会にもてはやされている。
初回登録は初月300円で
この続きが読めます。
有料会員になると、
全ての記事が読み放題
-
月額プラン
1カ月更新
2,200円/月
初回登録は初月300円
-
年額プラン
22,000円一括払い・1年更新
1,833円/月
-
3年プラン
59,400円一括払い、3年更新
1,650円/月
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2025年12月18日号






お気に入り記事