読者も一緒に謎解きを楽しむ次なる古典にふさわしい一冊

「今まで読んできたもの、書いてきたもの、僕が持っているすべてを注ぎ込みました」。そう語る櫻田智也さんは、『失われた貌』で本年度「ミステリーベスト10」国内部門第1位に輝いた。『サーチライトと誘蛾灯』から始まる〈魞沢泉〉シリーズの短編集で知られる著者が初めて挑んだ長編の本作は、これまた初となる警察ミステリーだ。
「これまで短編ではアマチュア名探偵を書いてきたのですが、今作では“職業探偵”にチャレンジしました。読者に一緒に謎解きを楽しんでほしいと考えたとき、最後まで手の内を明かさない名探偵ではなく、捜査によって徐々に秘密を明らかにする刑事が主人公にふさわしいと思ったんです」
山中で発見された謎の遺体。顔を潰され、歯を抜かれ、手首から先を切り落とされており、身元の特定は難航する。事件を担当することになった捜査係長の日野雪彦が本書の主人公。合同捜査で他署との力関係に翻弄される日野は、激務の中で家族との距離感にも悩まされる。この人間臭さが本作の魅力の1つだ。
「日野という人間の色々な面を描くことが、この物語にはどうしても必要だと思っていました。刑事はコンビで動くのが定番ですが、日野が探偵のように1人で動くシーンもあえて入れました。それ自体は昔の刑事ものでもよくあったことですが、さらに警察組織内の理屈、しがらみ、いざこざを描くことで現代的なリアリティを加えました」
時代に合わせてアップデートしつつ、本格ミステリーという伝統芸能を踏襲し、発展させることを意識したと語る。その点がミステリー初心者からマニアまで幅広く支持を集めた。
「宮内悠介さんが『次なる古典となるかもしれない一冊』と評してくださったんです。僕がやりたかったクラシックなミステリーというのを評価していただいて嬉しかったです」
新境地となる長編の1作目でミステリー史に名を刻んだ櫻田さん。これからいったいどんな作品を見せてくれるのか。
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source : 週刊文春 2025年12月11日号
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