
記憶にあるお正月のなかで、一番寒かったのは、大晦日に除夜の鐘を生で聞くために、京都のある神社かお寺で過ごした夜だ。梵鐘というくらいだからお寺なんだろうと思うけど、仏様と神様が敷地を分け合っているような神社仏閣も多いからはっきりしない。
一体どこだったのか。子どものころの記憶のせいで、名前は覚えていないけど、灯籠の明かりでぼんやり照らされた、夜の石の階段が、昼よりずいぶん長く冷たく硬く感じたことを覚えている。
たしか日暮れ前から友達と一緒にその神社仏閣にスタンバイして、甘酒を配る係だった友達のお母さんと時々話したりしながらも、基本は敷地内の庭園や境内をうろついていた。
日が落ちてから急に気温が下がったけど、夜9時を過ぎたころから、さらに尋常じゃない冷えがおそってきた。室内に入れるところがあれば良かったけど、見つからなくて、夜になるにつれてどんどん集まってきた参拝客たちも、みんな震えながら外で過ごしていた。
真冬の京都の夜はいつも家のなかで過ごしていた私は、こんなに寒いとは思わず、ちょっと外に出ていくぐらいの厚着でやって来たことを、とても後悔していた。茶色いアクリルのコートでは、身を切るような寒風は防ぎきれず、呼吸するたびに、もわっと空気中に浮かぶ白い息さえ、身体から暖かみをはき出してしまったようで、もったいなかった。
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source : 週刊文春 2026年1月1日・8日号






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