
海外の地に到着した当日は、時差の影響をもっとも感じる。8時間の時差の重みを、疲れた身体にずっしりと感じながら、眠たくて眠たくて半眼で食べた、イタリアの小さなレストランのパスタは、命の味がすると思うほど美味しかった。
15年以上前に食べたから、どんな種類のパスタだったか、ソースが何だったかも憶えていない。ただ、本場のパスタってこれほど新鮮な味がするのかという驚きと、死ぬほど疲れているからこそこんなに美味しく感じるんだろうなという自覚は鮮明に刻まれていて、今でも熱心に思い出せば、あの食卓に座っている気分になれる。
冬の寒い夜、地元の人たちに愛されている小さなレストランは満員で、どのテーブルの客たちもワインを飲んでいて、あと何時間も帰りそうにない。
2ページくらいしかないシンプルなメニュー表、私は外国人だからどんな料理を頼めばいいか分からなくて、一緒にテーブルを囲んでいる人たちが勝手に決めていく。
飛び交うイタリア語は理解できず、しかし元より雑談する気力も無くて、椅子に猫背気味で座りながら、重いまぶたをこじ開け、ひたすら料理が来るのを待っている。
ようやく届いたパスタは、たった2種類で、あとはパンとチーズのみ。それを食卓を囲む3人で分けて、足りないかなと思ったけど、1皿に盛られている量が日本よりよっぽど多いから、杞憂だったとすぐに気づいた。
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source : 週刊文春 2026年1月22日号






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