いきなり焼きソバと生卵のドアップで始まり、しかもデヴィッド・リンチ風の不穏な効果音付きだから、画面に釘付けである。

 溶き卵に焼きソバをつけると、音をズルズルたててすする若い男。それを気味悪そうに見ている年上の男が「あの、野菜とか、サラダは?」と口を挟む。

 大げさに怯えてみせる中年男は、おお、中島歩じゃないか。外見は彼もかなり不気味というか異彩を放っている。全盛期のロッド・スチュアートにも似た長髪で、後ろ髪はさらに長い。

 この冒頭シーンだけで、『俺たちバッドバーバーズ』が文句なしの傑作と確信できた。監督、脚本は『ベビわる』シリーズの阪元裕吾だ。

中島歩 ©時事通信社

 W主演っていってもいいかな。中島を相手に生意気な若い理容師を演じるのは『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』で、いい味を出してた草川拓弥だ。

 原宿のオシャレな店に勤めていたが、生き方に迷って“自分探しの旅”に出たのが、中島演じる四〇歳の美容師、日暮歩(ひぐれあゆむ)だ。半世紀前の青春映画のようにヒッチハイクで降りたった田舎町で、汚れた髪をさっぱりしようと入ったのが月白(つきしろ)理容室。月白司(つかさ)(草川拓弥)の古びた理髪店だ。

 洗髪されて気が緩んだ歩が、どこかお痒いとこはと訊かれ、全身どこも、足も痒いかな、と口にした瞬間だ。月白の態度が一変して「アナタ、もしかして、そっちの依頼人?」

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source : 週刊文春 2026年1月29日号