以前も書いたけど、この連載を始める時に、「自慢話にならないよう」「説教くさくならないよう」この2つは肝に銘じていた。
なぜなら、自分でもそのような話が続く成功者の本を読んでいると、食傷気味になるからだ。彼らの仕事ぶりや普段の生活を知りたいのは山々なんだけど、武勇伝や有名人との話があまりに続くと、(もういいって)という気分になる。偉大な先輩経営者が私のような次世代の経営者に伝えたいという想いで書いたものでも、上から目線が続くとどうしても怒られてる気がしてしまうのだ。
そして我が身を振り返ると、この連載を書いていて、普段の生活を書けば金のかかる非日常が多くて自慢話になってる気がするし、仕事への心構えやノウハウを書けば説教くさくなる気がしてならない。今も、それがずっと気掛かりな状態で私は2年間これを書き続けている。
初心を忘れてはいないだろうか、ふと心配になり、掲載された週刊文春をパラパラとめくりながら他の連載陣のコラムと客観的に比較してみると、面白くて読みやすい連載の著者は、表現は悪いけど「自虐」が多いことに気づく。
たとえば林真理子さんは日本大学理事長の重職にありながら、相変わらずおばさんキャラを出してはクスッと笑わせてくる。将棋の杉本昌隆八段は、ご自身もこの世で一握りの天才であるにも関わらず、なにしろ弟子が藤井聡太名人だ。タイトルからして「師匠はつらいよ」で、にやけてしまう。宮藤官九郎さんの作品には人間の弱さや不器用さに対する愛情を感じさせる視点があるけど、コラムからもそれが滲み伝わってくる。
「他者視点」があるか
華やかな職業に就く著名人が自分の弱さをさらけ出した文章は、なぜ読みやすく、そして面白くなるのだろうか。その理由を考えた時、この言葉が頭に浮かんできた。
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source : 週刊文春 2026年5月28日号






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