われわれの生活環境は昔と比べて大きく変わった。

 昔は多様な自然の中の一部だった。大きい屋敷の隅を間借りしているようなものだ。そこでは何一つ思い通りにならない。夜は蚊帳を吊るすが、家中の窓も戸も開けっぱなしにして風を入れても暑く、蚊も1匹か2匹は必ず蚊帳の中にいた。

 近くの川はすぐに氾濫するし、台風のときは家がいつかは吹き飛ばされてしまうと本気で思っていた。夜になると外は真っ暗で何がどうなっているのかまったく分からない。魑魅魍魎が跋扈する異世界が広がっているとしか思えなかった。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号