時間あたりの仕事量は変化する。たとえば本を書いた友人から著書が届く。送ってもらった礼状のハガキを「すぐに書ける」とタカをくくり、1日延ばしにしているうちに1ヶ月がたつと、相手は「ここまで時間がかかっているのだから、本を読んだ感想を賞賛のことばをちりばめながら書いているに違いない」と期待に胸をふくらませている。

 そう考えると、いい加減な礼状は書けなくなる。ましてもらった本はまだ1行も読んでいないのだ。かといって1行でも読んだが最後、批判や反論が頭を駆けめぐり、ますます相手の期待通りに賞賛しつつ、読んだことが分かるように礼状を書くことは不可能になる。

 だがいくら不可能だからといって礼状の執筆を打ち切るような無責任な態度は許せない。行くも地獄、とどまるも地獄の、まさに地獄の真っ只中に、1日も休むことなく、耐え続けるしかない。そうしているうちにあっという間にさらに数ヶ月がたってしまう。

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source : 週刊文春 2026年7月16日号