こんなにまずそうな食い物をドラマで見たのは初めてだと衝撃を受けた『ムショラン三ツ星』。

「まずい食い物」がドラマを動かすために必要だからまずそうでいいんだが、そういう役目の、たとえば新婚の妻が失敗した料理とか見慣れてるはずなのに、これほどのものはなかった。

 高級イタリアンの一流女性シェフが、店が潰れて仕事が無くなって刑務所の管理栄養士に転職、公務員の事なかれ主義、前例遵守主義に縛られながら「ちょっとでも美味しいものを受刑者に食べさせたい」と奮闘するお話。

 受刑者との心の交流、刑務官とのやり合いなんかが描かれる人情ドラマで、その元シェフで管理栄養士の小池栄子(いい感じにオバサンになってて、ダサい上着とか着てるのがとてもよく似合ってる)が、副食としてサバの梅煮を提案してつくるんだが、サバの切り身の大きさを受刑者ごとにきっちり同じにしないといけないという規則の前に、大鍋の中の梅煮を大ヘラでつぶして等分に皿に盛って配膳する羽目に。プラスチックの皿に、ぐしゃぐしゃになったサバの身と梅と、そして小骨がごっそり混ざってところどころに飛び出てキラキラ光っている。衝撃の「まずい……」絵面。受刑者もそれ見てすっかり元気をなくしている。こんなものを食わせるということが刑罰ではないだろう。

小池栄子 ©文藝春秋

 ……ということで、栄子はアタマの固い刑務官たちに立ち向かいながら、そして受刑者とすったもんだやりながらの奮戦は続くのである。その後、刑務所の食事が目のさめるような美味しそうなものに変わっていく……ということは別になく、カレーも鳥の唐揚げもドーナツも、サバよりはマシだがあまり食欲わくようなものには描かれない。そういう演出なのか、単にうまくいっていないのかわからないが。そこが面白い。

 ところで、このドラマの中で一つ私が「それだ!」と思った箇所がある。

 栄子がイタリアン有名シェフの肩書きを持ってやってきた時に、そんなシェフ呼んでうまい食事作る必要が刑務所にあるのかと反対が大勢を占めた時、所長の國村隼が(最近、この人使われすぎ)、小洒落たパッケージを取り出し、「これ、イタリアの刑務所でつくってるクッキー」って見せるのだ。「あちらではこういう展開もあるよ」と。

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source : 週刊文春 2026年7月9日号