人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

『ローマの休日』の王女のことを思ったのは、友人が彼女を紹介する際、言った「このコ、大金持ちの令嬢だから」が、単純に結び付いたまでのことである。

 友人がどうしてそんな不釣り合いな女子大生を僕と引き合せたかったのか不思議だったが「趣味は油絵を描くこと」と、聞いて少し合点がいった。それは僕が美大生だったからだ。

「今度、絵を教えて欲しい」

 と、言われ調子に乗って「いいよ」と答えたのはいいが、それもその場の社交辞令だろうと思っていたが、それから数日して彼女からその件で電話が掛ってきた。

 教えると言ってもこの四畳半のアパートでだ。当日、部屋を少し片付けて待ち合せた駅前に彼女を迎えに行った。

 到底これから油絵を描くなど思えないエレガントなファッションで彼女はいた。

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source : 週刊文春 2021年8月12日号