戦争経験者が少なくなってきている今、その記憶はどうやって次の世代に繋げばよいのか。夢半ばで戦没した約130人の画学生たちの作品などを展示する「無言館」の共同館主を務める内田さんと戦争に関する著作を多く持つ梯さんが語った。

内田 2024年以来ですよね。梯さんが『戦争ミュージアム』という、日本各地の平和を祈念した博物館についての本を上梓された頃で、無言館にもいらして下さり、対談もさせていただきました。

 也哉子さんはちょうど、共同館主に就任された頃でしたよね。あれから2年。どんな活動をされてきたのかなど、たくさん伺いたいことがあって今日は楽しみにしていました。

内田 いつも在廊しているわけではないので大きなことは言えないんですけれど。理事会などの活動はもちろんですが、他に主だったものとしては例えば、毎年6月に「無言忌」というものを開いています。展示作品の作者のご遺族の方たちが集って語り合うんです。お子さん世代は少なくなってしまったのですが、今はお孫さんや曾孫さんたちも。

内田氏

 年に一度、お父さんやおじいちゃんに会いにくるような感じですね。

内田 ご遺族の方たちにとって父親との思い出は本当に僅かだけれど、その思い出を今でも宝物のように大事にしていらっしゃるんです。すごく素敵な集まりで、私も学ぶことが多い。ある娘さんなんかは目に涙を浮かべながら、ミュージアムを作った館主の窪島(誠一郎)さんに感謝される。なぜなら、いま展示されている作品は自身ではどうすることもできずに屋根裏でボロボロになっていたもので、自分が死んだら子供たちは処分してしまうしかないだろうと、そこはかとない罪悪感を抱いていたそうなんです。そんな時に窪島さんが手を差し伸べ、修復した上で美術館に収蔵してくれた。そうして色んな人たちが作品に会いに来てくれるというのは、自分たちにとっては父親が確かに存在したんだという灯火のようなものなんだと。お孫さんの世代は、おじいちゃんたちとは会ったこともないわけですよね。けれど、作品を前にすることで、時間を越えて出会い直しているというか。

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source : 週刊文春 2026年8月13日・20日号