北海道砂川市に住む大谷曻さんは、戦時中、天皇と皇居を警衛する近衛歩兵のひとりだった。終戦後、近衛師団は解体。だが、禁衛府として再編成され、翌年に廃止されるまで、皇族の警護を担っていた。

その頃、現在の皇居はまだ「宮城」と呼ばれていました。戦後の昭和20(1945)年11月頃だったと思います。歩哨として宮城内の警戒にあたっている時、お住まいだった御文庫にお戻りの昭和天皇が、後ろにお供を連れて私の目の前を通りかかりました。
私が捧げ銃の敬礼をすると、外套をお召しの陛下は高帽子の鍔に手をやり、こちらに会釈をしてくださったのです。その仕草がとても自然体で、大変に感激しました。態度にお人柄が溢れているんです。将校なんかは、偉そうに通り過ぎるだけでしたから。陛下との距離は5、6歩ほど。それまでは、間近で陛下のお姿を見る機会などありませんでした。私が灰になるまでずっと心の宝物です。
大谷さんは、道央に位置する北竜村(現北竜町)の貧しい稲作農家に長男として生まれた。20歳を迎えた1943年、徴兵制度の検査を受け、兵役に最も適した「甲種」に合格する。
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source : 週刊文春 2026年8月13日・20日号
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