「週刊文春、読みましたよ」
主治医の先生がそう言った。
今日は抗がん剤の投与を受ける日だ。診察に先立って血液検査を受けたところだ。この診察で問題がなければ抗がん剤が投与される。
ただ、医師の言う週刊文春がいつ書いたものかは分からない。原稿を書いてから刊行されるのは1週間後か2週間後か、30年も書いているのに、わたしは正確に把握していない。書くだけ書いたら後は野となれ山となれという主義なのだ。「ツチヤの尻尾切り」と言われている通りだ。だから書いた原稿がいつ発行の週刊文春にのるのか、あるいは掲載されないまま発行されているのか分からない。医師が読んだ週刊文春の内容は分からないが、問いただしたりすると角が立つ恐れがある。わたしを生かすも殺すもこの医師なのだ。機嫌をとっておく必要がある。そこで当たり障りのない返答をした。
「そうですか。それはどうも」
「冗談で書いているんだと思いますが、CTの画像ですが、ほらこうなってるんです」
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source : 週刊文春 2026年8月27日号






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