【前回までのあらすじ】これは事実に基づいた物語である。父・日下秀一、母・亜弓のもとに生まれた耀。耀が秀一の実子ではないことが発覚し、両親は離婚した。秀一は瀬里と再婚。火災により亜弓が死亡し、秀一の家で耀が「お試し泊」をした時、瀬里が事故に遭う。その後、小学5年生になった耀は、同級生の野々山豊佳に命じ、豊佳がいじめている西野栞里を呼び出した。
「こちらへどうぞ」
後に続いて細い廊下を進む。煙草の臭いに気づいた。ほかにも大人がいるのだろうか。なんとなく気まずいような気もするが、今さら帰れない。大人がいたほうが静かな会になるかもしれない。
そんなことを考えながら、リビングと思われる部屋に踏み込んだ。
言葉を失った。
同級生の姿は一人も見当たらない。そこにいたのはもっと年上のおそらくは中学生、それも高学年と思われる男子が4名だった。煙草も彼らが吸っていたようだ。
「あの、耀くんは?」
もともとは聡明な栞里の頭の隅には、危険信号が灯っただろう。大人なら条件反射のように引き返すかもしれない。しかし、まだ10歳の栞里は固まったまま、そんなことを訊くことしかできなかった。
何人かが声を立てて笑った。テーブルにビールやチューハイの缶が何本も載っているのが見えた。

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source : 週刊文春 2026年9月3日号






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