たまに、こつんと音がする。

 書くという行為は、文字を拾っていくような感覚。文字は無限にあり、脈絡なく空中を漂っている。それを拾い、組み合わせる。言いたいことや雰囲気が、近かったり、遠かったり。あっちへうろうろ、こっちへふらふら。どうにか道らしきものになってほっとする。先人たちが切り拓いてきた匂いのする獣道を、スタッフの皆様のお力をお借りして。締切というものが恐怖ではあったが、助けられもした。際限なく続く答えのない行い、それを強制的に完成までもっていかせる力が締切だった。ありがとう締切。まさか締切に感謝する日が来るとは。そもそも、自分がエッセイを書くことがまさかなのだが。

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source : 週刊文春 2026年9月24日・10月1日号