「他の土の研究者と比較して、唯一無二なところはどこですか?」と取材で聞かれ、私はうろたえた。慌てて研究内容の独創性を語ってはみたが、正直に話せていない後味の悪さが残った。私に唯一無二な特徴があるとすれば、それは誰よりも土を捨てられないところだ。せっかく採取した土。一つ一つの土に思い出がある。

 だが、「土を捨てられずに困っている」という声を最近よく耳にするようになった。多くの人が私と同じ悩みを抱えていると知ってホッとしたのも束の間、どうも中身は違うようだ。なんでも、プランターの土のやり場に困っているという。

 世間は空前の家庭菜園ブームだが、皆が毎年続ける覚悟があるわけではない。うまく育たずに飽きてしまい、草ボーボーで放置した末に、引っ越すのでなんとかしたいと思っても、連れて行くには土は重すぎる。

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source : 週刊文春 2026年10月8日号