【前回までのあらすじ】これは事実に基づいた物語である。父・日下秀一、母・亜弓のもとに生まれた耀。耀が秀一の実子ではないことが発覚し、両親は離婚した。秀一は瀬里と再婚。火災により亜弓は死亡した。耀は裕福な桑原律夫・篤代夫妻の養子になるが、桑原家に強盗が押し入る。事件後夫妻は、弁護士を通じ、3000万円を支援する代わりに耀を引き取ることを秀一に打診する。
つい声が大きくなってしまった。
あわてて周囲を見回すが、幸い席は空いており、こちらを見ている客はいない。もう一度声をひそめて質問をする。
「この額を支援してくださると?」
「はい」
相変わらず、乗用車を売買する商談でもしているような雰囲気だ。
「なぜです? どうしてこんな大金を?」
「10歳の子供を一人、大学卒業まで育てるのにかかる費用を試算しました。この数字はその平均額の“上方”と受け止めてくださって結構です。と同時に、いわばホショウでありホショウでしょうか」
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source : 週刊文春 2026年10月22日号
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