「サエない兄ちゃんがすごく愛しい」
そんな気持ちにさせてくれるドラマがある。『あの頃。』っていう映画がまさにそれだった。ハロプロオタクの兄ちゃんたちのサエない日常。主演が松坂桃李で松坂桃李なのにきっちりサエないのもよかったが、私がいちばんグッときたのが「性格悪いが憎めない小男」の仲野太賀で、松坂桃李がふっとぶぐらいチャーミングだった。それでしばらく仲野太賀をおっかけたりしたが『あの頃。』以上の太賀にはまだ会えない。それは太賀が悪いんではなくて「サエなくてみっともなくて情けない兄ちゃんの魅力」を「絶妙なキャスティングで見せてくれる作品」がないんだ。ぜんぜん。
と思ってたら敢然と登場したのである、「ドキドキするほどチャーミングなサエない兄ちゃん」が活躍する『赤灯えれじい』が。
高卒で無職で実家でゴロゴロして母親にはジャマにされヤンキーには金を取られヘコヘコしてるしかないサトシ。もちろんモテない童貞。交通誘導のバイトにやっとありつき(あの誘導員が振ってる棒が赤く光る――「赤灯」なのだ)、そこでも同僚や通行人やトラック運転手にさんざいじめられてるところで、助けてくれた同僚のチーコ。

チーコがまた、絵に描いたようなヤンキー女子で、口も悪いし手も早い。根本が黒くなっただらしない金髪で、うんこ座りしながらタバコをぷはーっと吸ってる。最初おびえてたサトシくんが、このチーコを好きになっちゃうんだな。
この2人がホントに素敵なの。サトシくんの素晴らしいほどのサエなさ。そしてそのサエないところがたまらなく可愛いんだ。
そしてチーコ。このチーコがすごく不思議で、美人にも可愛くも見えない、マジもんのヤンキーそのもの。しかしその美人でも可愛くも「ない」ところがすごく魅力的なのだ。
既に有料会員の方はログインして続きを読む
※オンライン書店「Fujisan.co.jp」限定で「電子版+雑誌プラン」がございます。ご希望の方はこちらからお申し込みください。
source : 週刊文春 2026年11月5日号
お気に入り記事