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食べログピンチ! 点数急落訴訟で公取が動いた

「週刊文春」編集部
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「当社は店舗ごとに毎日、食べログの点数を記録していました。しかし、ある日その点数が軒並み下がっていたのです」

 こう訴えるのは、都内を中心に38店舗を展開する韓国料理チェーン「KollaBo」の運営会社・韓流村の任和彬(イムファビン)社長だ。

やらせ口コミで問題になったことも(画像は公式ツイッターより)

 口コミで“本音の評価が分かる”とされる日本最大級のグルメサイト「食べログ」で点数の急落が起きたのは、2019年5月21日のこと。任社長が言う。

「悪い口コミが増えたわけでもないのに急に点数が下がったのです。グーグルやホットペッパーなどの点数は下がっておらず、食べログだけでこの現象が起きた」

 新宿店は3.51点が3.16点になり、中目黒店に至っては3.51点から3.06点まで下落。最大で0.45点、平均約0.2点も下がったのだ。

19年5月21日の前(上)と後(下)で点数が大幅変化(公式サイトより)

「焼肉トラジ、一蘭、天一なども点数が下がっていました。共通するのは、十数店舗以上展開するチェーン店だということです」(同前)

 売り上げも大幅に減った。韓流村は元々、食べログ経由の売り上げが全体の35パーセントを占めていた。だが食べログ上の店舗のPV数が月に約1万PV下がり、売り上げは月平均約2500万円落ちたのだ。

 チェーン店の点数が急落した背景には何があるのか。任社長はこう主張する。

「食べログの収入源は個人ではなく店舗。消費者からも収益を上げようと、個人の有料会員制度も始めたが17年に頭打ちに。そこでさらに店舗からの収益を上げようとしたのでしょう」

 サイトに掲載されている店舗は、食べログと取引をしていない非会員、取引のある無料店舗会員、有料店舗会員の3種類ある。

「無料店舗会員はプロフィールの編集やクーポン発行等ができるだけ。一方、有料店舗会員は高いものだと月額5万円、10万円のプランがある。検索上位への表示機能などに加え、特定の時間に上位に表示することもできる」(食べログ関係者)

 ただチェーン店の多くは有料店舗会員ではなかった。

「元々、チェーン店は口コミの評価も点数も高かった。つまり有料会員にならなくても上位に表示されて、予約も入ってくるため、食べログは会員料が取れない。そこで点数を下げるアルゴリズムを導入して売り上げを落とし、チェーン店も広告費を払わざるを得ない状況を作り出したかったのではないか」(任社長)

 そこで任社長は20年5月、点数を下げる“チェーン店ディスカウント”により損害を負ったとして、食べログの運営会社・カカクコムを提訴した。

 韓流村側に追い風となったのが、グーグルなど独占的な地位を持つプラットフォーマーが、アルゴリズムを変更して、恣意的な操作を行っているのではないかと、世界的に問題視されていること。日本でも提訴直前の3月に、公正取引委員会が「飲食店ポータルサイトに関する取引実態調査報告書」を出していた。

「食べログとは明記していませんが、アルゴリズムを変更して点数を落とすことで、特定の飲食店が不利益を受ける差別的取扱いが、独占禁止法に違反する可能性に言及していた。またグルメサイトが飲食店に対し、優越的地位にある可能性も指摘している」(社会部記者)

 一方、カカクコム側は、

「19年5月にアルゴリズムを変更したことは認めたものの、『公平公正にやっている』と言うばかり。チェーン店を狙ったかどうかは、一切答えませんでした。また、ぐるなびなどの競合他社も存在するから優越的地位にはないと主張。最大の争点である点数については、『非会員など食べログと取引をしていない店舗にも用いられる指標で、韓流村との取引には当たらない』、だから、不公正な取引方法を行う事業者を処罰する独禁法違反にはならない、と言い続けたのです」(任社長)

 裁判はしばらく膠着状態が続いた。だが――。今年4月、事態は動き出す。

 韓流村が訴訟内容に独禁法に違反するシステムの差し止め請求を加え、食べログの点数の表示を止めるよう求めた。さらに、元公正取引委員会事務総局審査局長・南部利之氏の意見書も提出したのだ。南部氏は意見書でこう述べている。

〈「チェーン店ディスカウント」は、不当な差別取扱いとして、不公正な取引方法に当たり、独禁法に違反するとの原告の主張は妥当と言えます〉

 すると急遽、独禁法などの訴訟を中心に扱う民事第8部に裁判体が変更された。

「裁判所に行くと、『別の裁判官に代わります』と突然言われた。そこで民事第8部の裁判官に、南部先生の意見書の正当性を確認するため、公取の意見を聞くよう求めたのです」(任社長)

 そして9月19日、公取から古谷一之委員長名義で「公審第650号」と題された意見書が出されたのだ。

 そこでは、カカクコム側の「取引には当たらない」との主張に対して、「点数」表示のサービスは〈「取引の条件又は実施」に当たると考えられる〉と否定。さらに今後の裁判において、食べログが優越的地位にあるかどうか、そしてアルゴリズムの設定・運営が恣意的になされたか否かについても、裁判の〈考慮要素となる〉と述べているのである。

 独禁法に詳しい平山賢太郎弁護士は、「裁判所が公取に独禁法解釈の意見を聞くこと自体、異例のことです」と驚く。

「この意見書は、争点である点数について『取引』だと認めたことに意義があります。また、食べログ側が優越的地位にあるかどうかも考慮要素とされました。今後、明確な道筋に沿って、審議は進んでいくでしょう」

 公取の登場で俄かに訪れたピンチをどう受け止めたのか、カカクコムに聞くと、

「係属中の訴訟に関する内容のためコメントは控えさせて頂きます」(同社広報室)

 任社長はこう意気込む。

「10月上旬の裁判で、食べログ側はアルゴリズムについて『関係各所に確認し、可能な範囲で開示する予定』と答えました。彼らにはなぜ点数が急落したのか、説明する責任がある」

 食べログ側の、次の回答期限は12月1日だという。

韓国の有名店がレシピを提供

source : 週刊文春 2021年10月28日号

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