今週号で、また1人の記者が「書きデビュー」を果たしました。Y君、26歳。ワイドと呼ばれる1ページ弱の最も短い記事を書いたのです。Y君が「週刊文春」に来たのは今年5月。それまでは、WEB媒体の編集者で記者経験はありませんでした。私にとって、Y記者のデビューは感慨深いものでした。

 昨年、小誌では初めての試みをしました。これまで、「経験者のみ」としていた特派記者の採用を、「未経験者も可」としたのです。この判断には、これまでいた記者から反発の声もありました。彼らは他誌で腕を磨いて、そこで結果を出して、「週刊文春」記者となった。

「『週刊文春記者』はそんなに軽いもんじゃない」、「社員ならともかく、いずれ自分たちのライバルになる特派記者の育成になんで協力しなければならないのか」というのが彼らの声でした。

「週刊文春記者」にプライドを持っていてくれる彼らの気持ちは本当にうれしいものです。一方で、出版界の状況は大きく変わっていました。これまでは、週刊誌がたくさんあり、若い人も含めた人材の流動性がありました。ところが、週刊誌がだんだん減り、また週刊誌でも高齢者路線に舵を切って、足を使って取材する媒体は少なくなっています。そもそも、記者自体が少なくなっており、人材の供給源が枯渇しつつありました。

 しかし、社員の採用面接をしていても、「調査報道をやりたい」「事件の取材をしたい」「記事を書きたい」という若者たちはたくさんいます。経験者の枯渇と意欲ある若者たち。これを解決する手段が、「週刊文春」で未経験者を採用して、育てるというものです。

 結局、採用された未経験者は3名。24歳から26歳の若者たちです。みな、ひたすら「アシ」、なかでも張り込みや事件の聞き込み取材など、基本中の基本の取材に投入されてきました。そんな中、Y記者がついにチャンスを掴んだのです。

 テーマは、人気女性芸人の恋。もともとWEB媒体で、お笑い芸人の記事などを担当していたY記者は、それなりの土地勘がありました。しかし、書きの指示に従っていればよかったアシとは違い、書きはすべて自分で判断し、結果が自分に跳ね返ってきます。張り込む場所はここでいいか、当事者が複数いる場合、直撃する順番はどうすればいいか、直撃したら何をどう聞くのか。こういう時に、相談に乗ってくれるのが、デスクであり、先輩記者です。Y記者は、今回、いろんな人に相談していたそうです。

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source : 週刊文春