難民を他国への嫌がらせに使う。こんな非人道的な行動をとっているのは、東欧のベラルーシです。今年の秋になって、中東からの多数の難民がベラルーシに入国して、ポーランド国境に殺到。ポーランドへ越境しようとして、ポーランドの国境警備隊に阻止される事態となっています。寒さが募る中で、大勢の難民は行き場を失っています。
どうして多数の難民が押し寄せたのか。「欧州最後の独裁者」の異名をとるベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の策略と見られています。ルカシェンコ大統領による野党勢力への弾圧に抗議するEU(欧州連合)がベラルーシに対して経済制裁を科したため、その意趣返しを始めたというのです。
ベラルーシといえば、今年5月、ギリシャのアテネからリトアニアのビリニュス行きの航空機がベラルーシ領空で、「爆破予告があった」と言われて、首都ミンスクの空港に着陸させられ、乗っていた反体制派ジャーナリストが逮捕されるという事件が起きました。要は虚偽の「爆破予告」を口実に、ルカシェンコ大統領にとって都合の悪い人物を捕まえてしまったのです。まさに国家によるハイジャックでした。
出発地も目的地もEU圏内だったことからEU諸国は猛反発。ベラルーシに対して経済制裁を科しました。
これに反発したルカシェンコ大統領が、難民を武器にして、EUに嫌がらせを始めたようなのです。
というのも、押し寄せた難民は、いずれもベラルーシ政府からのビザを取得してやって来たからです。彼らの多くはイラクやシリア、アフガニスタンからトルコに逃げてきた難民たちです。あるいは、豊かなヨーロッパでの生活を夢見た移民希望者たちです。
彼らが、どうしてベラルーシに来られたのか。実はベラルーシの国営旅行会社がベラルーシ行きのツアーを募集し、申し込んだ人にベラルーシ政府が簡単にビザを与えているからなのです。ツアー価格は日本円にして約25万円から50万円です。それを知った人たちが、地元で家や家財道具を売り払ってツアーに参加しました。「いったんベラルーシに入れれば、ポーランド経由でドイツに入れる」と考えたのです。
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source : 週刊文春 2021年12月9日号