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二人の父が見た上白石萌音|甲本雅裕、段田安則

朝ドラ「カムカムエヴリバディ」を10倍楽しむ10の秘密

「週刊文春」編集部
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力みなく、自然体に。それがとても心地よくて 甲本雅裕

(こうもとまさひろ 1965年6月26日生まれ。岡山県出身。89年『東京サンシャインボーイズ』に。劇団休止後はテレビ、映画等に多数出演。名脇役として様々な役柄で活躍)

3世代100年のファミリーストーリーを描いた連続テレビ小説。上白石は初代ヒロインを演じる(写真 NHK提供)

 僕は、初代ヒロイン・安子の父で、和菓子店を営む橘金太を演じました。

 岡山県出身なので、岡山が舞台の朝ドラに出られて純粋に嬉しかった。

 撮影中は休憩時間でも、岡山弁で話していましたね。上白石萌音さんは勉強熱心で、岡山弁も完璧でした。

 安子役の萌音ちゃんは、普段接するときも、本番中も親子のような雰囲気や空気を作り出してくれます。普通の家庭で、父と娘の間に存在する、照れのような微妙な感情まで表現してくれる女優さん。まるで本当の親子のような気持ちを抱いて仲良くなりました。

 萌音ちゃん演じる安子が健気で一所懸命だからこそ、金太は娘の幸せを一番に考えたキャラクターになったと思って撮影に入りました。そんな発見をさせてくれたのは萌音ちゃんでした。

 彼女のすごさは、力みなく、自然体のまま役に入り込むところでしょう。

 いつ、萌音から安子に変わったのかわからないお芝居をされています。

 でもカットがかかると、知らない間にプライベートへ戻っていてそれがとても心地よく、嘘偽りがない。

 役者は職人のようなものなので技術の面はあると思いますが、彼女に関しては技術で芝居をしていたと言いたくない役者ですね。萌音ちゃんの人間性の素晴らしさが、にじみ出ていたと思います。

 第4週の19回で、金太は濱田岳くんが演じた息子・算太の幻を見た後、亡くなりました。あの撮影前、「僕はこのシーンで絶対泣きませんから」と監督に話したけど、演じている途中で岳くんがグッときて泣きそうになっているのを見て涙があふれてしまった。

 最近、観ることができるときは毎朝、放送をチェックしているんです。

「安子の娘のるい、これからどうなるんじゃあ? 安子は幸せにならんといけんでえ!」と金太は死んでからも、テレビの前で手に汗握りながら娘の萌音ちゃんと孫を見守っています。

今もはっきり思い出す 撮影合間の出来事 段田安則

(だんたやすのり 1957年1月24日生まれ。京都府出身。96年、朝ドラ『ふたりっ子』で話題に。主な出演作に『半沢直樹』等)

 私が演じた雉真千吉は、会社経営者として厳格でありながら、家族を愛する人です。

 ネットで「千吉と岸田文雄総理が似ている」と指摘されているそうで、何度か言われたことがあります。自分ではどこが似ているんだろうな?って感じなんですよ(笑)。

 上白石萌音さんは、2年前にNHKのBSドラマで共演させてもらいました。萌音ちゃんはオバケの役でした。

 それが初めての共演で今回は2度目です。彼女は芝居もとても良くて、息子の稔と結婚してもらいたいと思える義理の娘を演じてくれました。

 感心したのはるいが赤ん坊の頃、子役が何人かいたときのことです。本当は撮影の合間にセリフの練習をしたいだろうに、子役全員の面倒を見て遊んであやしていた。

 萌音ちゃんに「疲れるだろう?」と聞くと、「いいんです。子どもが好きですから」と答えていました。

 おかげで子どもたちもすっかり懐いていて。画面上でも本当の親子のように見えたのではないでしょうか。

 撮影の合間で、萌音ちゃんや村上虹郎くんたちと謎解きをした思い出があります。

「川に鯉と鮒が泳いでいて、靴が流れてきました。靴を履いたのはどっち?」など、いくつか出しました。答えは鮒です。「鯉(恋)は履かない(儚い)」から。正解を聞いても、萌音ちゃんが一番ピンと来てなかったかな(笑)。

 千吉は最後まで安子のことやるいの額の傷を心配している。楽しみにご覧ください。

source : 週刊文春 2021年12月23日号

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