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目立つのは選手より新庄監督 トライアウトは役割を終えた

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「週刊文春」編集部
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 プロ野球で戦力外通告を受けた選手が現役続行をかけて臨む「12球団合同トライアウト」が12月8日、西武の本拠地メットライフドームで行われた。

 昨年は56人が参加したが、今年は33人と大幅に減少。現場で取材したスポーツ紙記者が語る。

「全球団の編成担当者が来ていましたが、その1人は『ケガ明けの選手の状態を見るくらいです。他球団や選手の手前、来てますよ、というポーズが必要なので』と話していた。記者も選手より、スタンドで目立っていた日ハムの新庄剛志監督ばかり取材してましたね」

 今回の目玉は2018年巨人育成ドラフト1位で二軍の首位打者にもなった山下航汰外野手。新庄監督は「うちが獲るならDHとかでも面白い」と語ったが、「パのDHは長距離砲の外国人選手の指定席。つまり、獲るつもりはないということですよ」(前出・記者)。

前巨人の山下航汰も猛アピールしたが… ©共同通信社

 13日現在で移籍が決まったのは、日ハムが育成枠で獲得した前巨人の古川侑利投手ただ一人。昨年移籍できたのは3人、19年も3人と狭き門になっている。

「そもそも野手は6打席、投手は3人相手のマウンドで実力が分かるはずがない。各球団とも編成部が他チームの選手を入念にチェックしており、獲るか獲らないかはシーズン中に目星をつけている。狙った選手には非公式に受験を回避するよう促し、一本釣りしてしまうのです」(球界関係者)

 実際、不参加だった前楽天の藤田一也選手は9日にDeNAが、前ロッテの大嶺祐太投手は13日に中日がそれぞれ獲得を発表した。

 気温9度の寒さの中、参加した選手は「密閉されたドーム球場じゃないと力が発揮できない」「実戦から2カ月近く空いた中での一発勝負は辛すぎる」と口々にこぼしていたという。

「昔と違い、各球団とも育成選手を多く抱えて編成計画を立てるようになった。そこからもこぼれる選手によるトライアウトは、もはや形骸化の一途を辿っています。近年は家族や恩師を呼び寄せ、最後にユニフォーム姿を披露する“引退セレモニー”の要素が強くなっていますね」(同前)

 興行ではないトライアウトの今後の位置づけに、球団やNPBも苦慮している。

「開催は12球団の持ち回り制で、スタッフの手配や警備費、球場使用料などの経費は全て担当球団の持ち出し。以前は観客も入れたため『経費がかかって仕方がない』と嘆く球団幹部もいた。選手会側からの要望で2001年から続いているが、NPBの内部からは『もはや役割を終えた。いつ止めてもいい』という声が上がっています」(同前)

 トライアウト自体にも“引退”が近づいている。

source : 週刊文春 2021年12月23日号

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