「いま最もチケットが取れない一人」と言われる落語家が秘話を明かす。


(やなぎやきょうたろう 1963年東京生まれ。日本大学商学部卒業後、書店勤務を経て89年柳家さん喬に入門。「さん坊」を名乗る。93年に二ツ目昇進し「喬太郎」と改名。2000年に真打昇進。)

 

 落語との最初の出会いはテレビでした。僕はいま58で、子供の頃は寄席中継や演芸番組がけっこうあって、いまより落語家をテレビで見かけることも多かった。先代の(三遊亭)圓歌師匠が、まだ歌奴だった頃をギリギリ覚えていますし、談志師匠が司会の「笑点」も記憶があります。亡くなった橘家圓蔵師匠は月の家圓鏡でしたし、先代の林家三平師匠もいた。

 ナマで聴いたという意味では、中学の頃、学校寄席が最初ですね。入船亭扇橋師匠の「饅頭こわい」がすごく面白かったのを覚えています。普通におやりになるんですけど、体育館中にひっくり返るような笑いが起きてましたね。

 あと、落語好きな同級生の影響もあって、ラジオで落語を聴くようになって。そこからはもう、落語にどっぷりです。音楽好きな若者がギターを触ってみるのと一緒で、噺も覚えるようになりました。高校が男子校で、自習時間や学園祭で落語を披露してみるんですけど、まあウケない(笑)。でも、あるとき塾の合宿でレクリエーションみたいな時間があって、そこでやってみたら、これがウケたんですよ。気持ちよかったですねえ。このとき、大学では落研に入るぞって誓いました。

 大学は、いまいろいろ言われている(笑)、日本大学の商学部。本当にマンモス大学で、学部単位で落研があったんですよ。

 僕は経商法落語研究会でした。ポジティブというか、けっこう積極的に活動しましたね。学生落語とはこうあるべきなんじゃないかとか、口角泡を飛ばしてしゃべるタイプ。他大学の面識ない落研でも、この人面白いなと思ったら電話して、落語会に出てもらったりもしました。中には、その後、落語家になった人もいるし、いま僕の会を札幌で主宰してくれている人もいます。でも、なぜか、その時点で落語界に入ることは考えなかったんですよね。

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source : 週刊文春 2021年12月30日・2022年1月6日号