米中対立の激化、ウクライナ情勢の緊迫といった世界情勢もあって、元日の社説はこぞって「資本主義や民主主義を守れ」である。コロナ禍で拡大する格差の是正に言及するものも多い。
このうち「データの大海で人権を守る」は朝日らしい見出しだ。いわゆるGAFAと呼ばれるプラットフォーマーが国家権力をも上回る新たな統治者として台頭していて、民主主義と衝突する危うさがあると指摘している。
毎日の見出しは「民主政治と市民社会 つなぎ合う力が試される」。為政者が少数者の意見にも耳を傾け、議論を通じて合意を作り上げるのが民主主義であり、「数の力」にものを言わせた安倍・菅時代の後に誕生した岸田政権は、民主主義の基本に立ち返ることが使命だと唱える。
主張に対する賛否はあろうが、この2紙には問題意識の絞り込みが窺える。一方、世の中の問題点をあれこれと挙げ、おかげで何が言いたいのかさっぱりわからないのが日経と読売だ。
「資本主義を鍛え直す年にしよう」。日経の見出しはもっともらしい。しかし社説の後段になるとやれ脱炭素だ、GAFAの動向は注意が必要だ、新型コロナウイルスのワクチン供給は国際協調が必要だと並べ立てる。
この社説の“網羅病”は、原稿の前半部分を読むとよく分かる。コロナは経済社会を大きく変えたと書いた上で、「急に職を失った人もいれば、経済面ではさほど影響を受けなかった人もいる」と記す。社説に期待する「時代を見抜く目」らしきものが微塵もない。
日経以上に焦点ボケを起こしているのが読売。感染症の拡大防止、格差の是正、イノベーション、経済安全保障……。小惑星探査機「はやぶさ2」の成功を支えた町工場の技術を持ち上げたかと思えば、夏の参院選の情勢にも触れるなど足元の課題を羅列してどれも大事だと書く。
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source : 週刊文春 2022年1月13日号