新年早々、薄気味悪い記事でお屠蘇気分が吹き飛んだ。

 話は深刻だが単純だ。「ネットメディア『Choose Life Project』(CLP)が、立憲民主党から資金提供を受けた事実を伏せたまま報道をしていたとして、ジャーナリストの津田大介氏ら出演者が5日、報道倫理に反するなどとする抗議文を出した」(6日朝日朝刊)という。

 書き方が面妖だ。誰が考えても、ニュースは立民が「資金提供」したおかしさであって出演者が「抗議した」ことではないだろう。それなのに記事は、立民の「調査中」とCLPの「不信感等を与えてしまう形となり大変申し訳なく思っております」とのコメントを並べるだけだ。追及の甘さが不思議でならない。

 権力批判の牙城だったネットメディアの不祥事だから筆が鈍るのかと思ったが、毎日も産経も同じ「抗議した」との書き方なのだ。こう書くべしとの業界マニュアルでもあるのだろうか?

 朝日の記事をよく読むと謎はさらに深まる。広告会社などを介して「番組制作費」1000万円以上を提供されたなどの事実関係は徹頭徹尾「抗議文」に依っているのだが、それを出した5人には「東京新聞の望月衣塑子記者」と「朝日新聞の南彰記者」が含まれることを明記してあるのだ。

 記者なら抗議より先に取材の成果を読者に知らせた方が良いと思うし、朝日も記者に話を聞いて少しは追加取材すべきではなかったか? 野党攻撃の急先鋒だったツイッターアカウント「Dappi」と自民党との関係をあれだけ追及した同紙なら尚更だ。

 そう思いつつ続報を待ったが、朝日の翌7日朝刊はベタ記事が2本。言いっぱなしのコメントでつくった中身のなさは見出しで分かる。「メディアに資金『共感して支援』立憲・福山前幹事長」と「メディア側謝罪」だ。

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source : 週刊文春 2022年1月20日号