週刊文春 電子版

電子版12時配信、4時間前倒しの本当の狙い

編集部コラム 第42回

「週刊文春」編集長
ニュース 政治

 今週から電子版の配信時間を雑誌発売前日の16時から12時に4時間前倒ししました。これにより、一番早く「週刊文春」のスクープを読めるのが、「週刊文春 電子版」になりました。

 これまでの16時は、「スクープ速報」と同じタイミングでした。スクープ速報とは、「週刊文春」のスクープをダイジェストでお届けする無料記事です。文春オンラインにアップされ、ヤフーなどの外部サイトにも配信されます。基本的には4本の記事が配信されますが、毎週少なくとも1本はヤフートピックスに選ばれています(今週は2本でした)。電子版をスタートした際、この16時にあわせて、記事を配信することにしました。

 ただ、実はマスコミ関係者、政界関係者、企業の広報の人々は、16時より先に記事を入手しています。いわゆる「早刷り」と呼ばれるものです。「週刊文春」は火曜日の夜に校了し、印刷され、早朝から全国に向けて発送されます。つまり水曜日の朝には、一部は刷り上がっています。この早く刷り上がった雑誌を、特別なルートで入手しているのです。

 よくドラマで「週刊誌のゲラを入手しました」と、記事を事前に手に入れ、対応を協議するといった場面があります。昨年、放送された「日本沈没」にもそんなシーンがありました。世間では「ゲラ」と勘違いされて流布しているもの、その実態のほとんどが「早刷り」です。

 ゲラとは、校了前の記事の原稿のこと。ゲラに記者やデスクが修正をいれて、最後に編集長がチェックして、校了する。こうなると、記事はもう変更がききません。我々にとって、ゲラが流出することは一大事です。校了前のゲラには、未確定の要素が多々含まれています。情報源の秘匿にかかわる記述など、情報源を危険にさらす可能性もあります。流出が起きれば記者、デスク、印刷会社、校閲など関わった関係者を事情聴取し、徹底的に調査します。流出者がわかれば、解雇を含めた厳正な処分を行う、それぐらい大変なことなのです。

 一方、早刷りは雑誌流通の慣行に基づいて出回るもの。16時前に出回り、タイトルなどの誌面をツイッターにアップする人も後をたちません。これは記事全部が読めるわけでないので、まだいい方です。中には、記事をスキャンして関係者に送る人々もいます。一説には、内閣情報調査室が、週刊誌の早刷りを入手して、政治関連の記事をスキャンし、政治家にばらまいているとも言われます。まさか、日本の政府機関が法を犯すことはないと信じていますが、著作権法違反をおこなっている人物、団体が見つかった場合は、法的措置をとる準備を進めています。実は、昨年、環境省の一部の部署が、業務にかかわる新聞や雑誌の記事を無断でスキャンし、メールで関係者に送っていたことがわかり、謝罪して使用料の支払いを行うと発表しました。

 企業でも、自社が取り上げられた小誌記事をスキャンして、関係部署に送っているケースもよく聞きます。以前、ジャーナリストの横田増生さんが、ユニクロで働き、その経験をルポした「ユニクロ潜入一年」を小誌で掲載した際、ユニクロは、記事をスキャンして、全店にメール配信して注意喚起していました。ちなみに、これも違法です。

 違法な早刷りスキャン記事が出回るのは、そちらの方が早く読めるからです。今回、配信時間を前倒しすることで、違法な早刷りスキャン記事より早く、「週刊文春 電子版」読者に記事をお届けできるようになりました。お金を払ってくださっている読者に、真っ先に読んでいただける仕組みは、長年考えてきましたが、紙では流通の壁がありました。それが、電子版で可能になりました。12時であれば、ほぼ早刷りより早くなると考えています。12時より早いのは、違法なスキャン記事と考えていただいて間違いありません。

 ぜひ、今後は水曜日のお昼休みに「週刊文春」のスクープを読んでいただければ幸いです。

「週刊文春」編集長 加藤晃彦

source : 週刊文春

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