受験シーズン真っ盛り。大学入学共通テストの初日に東京大学試験場前で起きた受験生刺傷事件は衝撃的でした。これをきっかけに、「あれ、いまは共通テストと言うんだ」と気づいた人もいることでしょう。かつて「共通一次試験」と呼ばれ、その後「大学入試センター試験」と改革されたものが、現在は「大学入学共通テスト」に改称されました。名前が変わっただけではありません。たとえば去年の「生物基礎」の試験では、mRNA(メッセンジャーRNA)の働きを問う問題が出ました。新型コロナウイルスのワクチン開発に当たり、ファイザーやモデルナはmRNAを使いました。最新の出来事を素材に使うことで、「勉強は社会に出て役に立つ」ことを知ってもらおうという意図が強く見えるようになってきたのです。
そこで今年の試験についてもチェックしてみようと、各教科の試験問題に目を通しました。私にとって受験勉強をしたのは遠い昔のこと。最近の試験問題など、とても歯が立ちませんが、「数学Ⅰ」の試験問題を見て、「どこかで見た図だな」と思ったのです。
この話は1月17日の午前10時前に私が日経新聞電子版にコメントとして掲載したのですが、その後、同じ視点のニュースを共同通信が配信。翌18日の地方紙に掲載されました。掲載が地方紙に限られたこともあり、御存じない方もいることでしょう。私の日経新聞のコメントも短文だったので、十分に意を尽したものにはなっていません。そこで、詳しく説明することにします。
問題は「数学Ⅰ」の「第2問」。太郎さんと花子さん(いまどきこういう名前を使うとは!)が、キャンプ場のガイドブックにある地図を見ながら会話しています。
太郎 キャンプ場の地点Aから山頂Bを見上げる角度はどれくらいかな。
花子 地図アプリを使って、地点Aと山頂Bを含む断面図を調べたら、図1のようになったよ。
図1では、AからBを見上げる角度がθで表されています。シータと読みます。ギリシャ文字ですよ。デルタやオミクロンではないギリシャ文字です。太郎が三角比の表を用いて角度θを計算すると、「16°だったよ」というのです。すると、花子がこう聞きます。
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source : 週刊文春 2022年2月3日号