ウクライナ情勢が緊迫しています。去年の秋からロシア軍はウクライナとの国境付近に10万人の部隊を配備して軍事演習をしてきましたが、年明けからはウクライナ北部で国境を接するベラルーシに部隊を新たに配備しました。ベラルーシとの共同演習という名目ですが、動員された兵士はロシア極東軍管区の部隊。多数の戦車や装甲車がロシア東部から列車で運び込まれています。
これだけではありません。ロシアは2014年にウクライナ領のクリミア半島を占領していて、ここにもロシア軍を配備しています。つまり3方向からウクライナを睨んでいるのです。
さらに驚くべきことにロシア海軍は全艦艇を動員して大規模な軍事演習を開始しました。ロシアに直接隣接する海域のほか、地中海や北海、オホーツク海、大西洋北東部、太平洋にも兵力を展開。動員されるのは、140隻の艦艇と支援船、海軍機60機、兵士1万人に上ります。
これだけの兵力を動員するのに、いったいどれだけ費用がかかることか。そう考えると、まさにロシア軍は臨戦態勢です。
これに対し、ウクライナ軍は総動員態勢。予備役まで動員してロシアとの国境沿いに兵士を配備していますが、もしベラルーシから攻め込んできたら、守備の背後を突かれる形になります。
なぜロシアが、ここまで強硬なのか。それは、ウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に入ろうとしているのを阻止するためです。
NATOは東西冷戦時代、ソ連や東欧の軍事力に対抗するため、西欧諸国がアメリカやカナダを巻き込んで作った軍事同盟です。ウクライナは、ロシアの存在を脅威に感じ、NATOに入ることで自国の安全を確保しようとしたのですが、ロシアのプーチン大統領にしてみると、もしウクライナがNATOに加盟すると、ロシアと国境を接する国にアメリカ軍やドイツ軍が駐留することになります。これは悪夢なのです。
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source : 週刊文春 2022年2月10日号