すごいね、毎田暖乃(まいだのの)。あの芝居の巧さはなんなの。悪達者すれすれというか。まだ十歳の少女が、嫌味になる寸前で演技に緩急つけて、観る者を笑わせ、ほど良く泣かしてみせる。

 冬ドラマの最優秀女優賞は、毎田暖乃で決まりだ。堤真一が主演の『妻、小学生になる。』で、堤の妻を演じる女の子だ。

毎田暖乃(写真は2/4放送より)

 誰がみても幸福そのものの三人家族が大型トラックとの衝突事故に遭う。妻の新島貴恵(石田ゆり子)は死亡、夫の圭介(堤真一)と娘の麻衣(蒔田彩珠〈まきたあじゅ〉)はゾンビのように暮す。生きているが、死んでいる。

 その十年後、すっかり生気を喪った新島家に、赤いランドセルを背負った元気な小学生がピンポンを鳴らす。少女は一声「ただいま!」と叫びドアを開けて家に飛びこむ。

「あたしは新島貴恵、あんたの妻!」。そ、そんな。呆然とする圭介。

 一体、何が起きたのか。「きょう、いきなり思いだしたのよ。あ、わたし新島貴恵だって」。ポカーンとする圭介と麻衣。テーブルに置かれたコンビニ弁当を見た小学生は「中身はちゃんとお皿の上に置いて食べるのよ」。

 夕焼け小焼けのチャイムが鳴った。女の子は急いで帰り支度をしながら、「いくら十年たったといっても老けこみ過ぎよ。どこの爺いかと思ったわ」と言い放って家を出た。

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source : 週刊文春 2022年2月24日号