ロシアがウクライナに侵攻したことに対し、日本も欧米各国も「ロシアを国際決済網から排除する」と発表しました。「SWIFT」(スイフトと発音)という耳慣れない言葉も登場しました。要するに何をするのか、解説しましょう。
日本時間の2月27日、「ロシアをSWIFTから排除することが決まった」というニュースが流れたところ、あるテレビ局で「モスクワ支局のスタッフにどうやって給料を払えばいいんだ」という声が出ました。「ドル紙幣を詰め込んだスーツケースをモスクワまで持って行くしかないのか」などという冗談めかした悲鳴が上がったのです。ロシア国内には、さまざまな日本企業が進出し、大勢の日本人が働いていますが、彼らに給料を送金することが難しくなる。SWIFTからの排除は、こんな影響が出るのです。
そもそもSWIFTとは何か。日本語では「国際銀行間通信協会」といいます。200以上の国と地域の1万1000以上の金融機関が加盟しています。国際的な組織ではありますが、別に公的な機関ではありません。銀行間の国際的な取引をしたいと希望する金融機関が任意に加盟している協同組合です。本部はベルギーのブリュッセルにあります。
国際的な送金ネットワークですが、SWIFT自体が送金業務を実施しているわけではありません。「送金してくれ」などという指示の情報をやりとりするだけなのです。その程度のことならたいしたことはないと思いますか。事実、過去にはFAXで情報のやりとりをしていたこともありますが、いまやそんなことでは大量の情報をやりとりすることができません。国際送金にはなくてはならない存在なのです。
たとえば、日本国内のAという地方銀行に口座を持っているB社が、ロシアからカニを輸入するとしましょう。ロシアのカニの販売業者に送金しなければなりません。そこでB社はA銀行に対して、ロシアの地方銀行に送金を依頼します。
でも、A銀行はロシアの地方銀行に口座を持っていないので、まずは国際的な送金業務を担当している日本の大手のC銀行に、「ロシアの地方銀行に送金してくれ」と金を送ります。これが口座振替です。このやりとりは、日銀ネットという日本銀行のネットワークを使います。A銀行もC銀行も日銀に当座預金の口座があり、口座間でお金が移動します。
次にC銀行は、ロシアの大手銀行に「送金するぞ」というメッセージをネットで送ります。このメッセージを伝える仕組みがSWIFTです。
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source : 週刊文春 2022年3月17日号