人の記憶というのは面白いもので、幼い頃の出来事でも、脳のどこかにメモリーとして残っているものだ。
僕は小学2年生の時からの2年間、経済学者だった父がイェール大学の研究員になった関係で、アメリカのブランフォードという街で暮らした。ニューヨークから距離にして東に150キロほどの街なのだけれど、40年後に訪れた時も、「あ、ここは左だな」「次の通りを右だな」と全く道に迷うことなく、かつて住んでいた家にたどり着くことができた。
父は3人の子どもの教育については割と放任主義だったが、特に出来の悪かった末っ子の僕にはとりわけ自由にさせていた。それは、アメリカ暮らしでも変わらない。パブリックスクールに通うことになったものの、当然、英語は全く分からなかった。
ところが、父は僕に「Bathroom(トイレ)はどこですか?」という言葉だけを教えて、そのまま学校に送り出したのだ。僕もその頃から思い切った性格で、その日のうちに「家においでよ。Come!」と言って友達を作り、引っ越したばかりの家に連れてきたのを覚えている。
7歳からのわずか2年間のことだったけれど、今から振り返ると、その時、アメリカでの「教育」に触れた経験はとても大きいものだったと思う。なぜなら、最初に経験したのが、アメリカ型の「思考力」を大切にする授業だったからだ。
逆に、アメリカから戻った僕にどうしても合わなかったのは、それとは全く考え方の異なる日本の「指示行動型」、いわば“右向け右・前ならえ”式の教育の手法だった。
アメリカにいる息子は
そもそも小学校や中学校、さらには高校くらいまでの教育の目的とは大きく分けて、基本的な人間形成や特定技能の習得、リーダーシップの育成だと僕は考える。その中のどの部分に力を入れるかが、学校教育の大きな方針となるはずだ。
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source : 週刊文春 2022年3月31日号