今年の2月28日から4日間にわたって、スペインのバルセロナで開催されたのが、「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」という世界最大のモバイル展示会だ。2000社近い企業が参加し、僕も現地を訪れ、楽天モバイルは「完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク」の世界展開に関するプレゼンテーションなどを行った。
会場には約200か国から6万人の参加者が集まったという。新型コロナの流行でMWCもこの2年間は規模を縮小してリモートが活用されていたから、3年ぶりの本格的な開催ということになる。コロナ前のMWCには10万人規模の参加者が集まっていたので、まだ以前と同じ水準になったわけではないけれど、その光景はすでに世界はアフター・コロナに突入していることを実感させるものだった。
ただ、会場で各国の経営者と話していると、やはり雰囲気にはどこか暗いものがあった。MWC初日の4日ほど前にはロシアによるウクライナ侵攻が始まり、世界の先行きに暗雲が垂れ込めていたからだ。その頃は現在のように市街地への攻撃はまだ酷くなかったとはいえ、「どうなるんだろうね……」と誰もが言葉少なだった。
とりわけヨーロッパの経営者にとっては、今回のウクライナでの戦争は、まさに「すぐ隣」での有事に他ならない。彼らの厳しい表情からは何とも言えない切迫感が滲み出ていた。
現地の人気シンガーが
僕はウクライナという国には2019年の初夏、一度だけ仕事で訪れたことがある。
楽天グループは2014年に、インターネット電話やグループチャットを手掛ける「Viber」を9億ドル(約900億円規模)で買収し、子会社化していた。キプロスに本社を置いていた(現在はルクセンブルク)Viberは、すでに東欧やアジア、中東などを中心に世界で3億人近いユーザーが登録している勢いのある会社だった。
現在ユーザーは約13億人。東欧のほか、ロシアや西アジアでも一般的なメッセンジャー、ビデオ通話のサービスとなっている。Rakutenというロゴはヨーロッパでの認知率が80パーセントを超えるけれど、生活インフラとして多くの人にViberが使われていることも、その要因の一つだろう。
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source : 週刊文春 2022年4月14日号