まるで「二つの戦争」を同時に見ている――ウクライナでの戦争に関する情報に接していると、そんな気分になる。
一つは、それこそ僕らが学校教育で習ったり、歴史として学んだりした第2次世界大戦のような戦争。近代的な市街地をミサイルや戦車で破壊していくような戦争が起こるとは考えていなかった。
巷間で言われているように、ロシアは数日という短期間で決着を付けたかったと思われる。ところが、ウクライナの激しい抵抗によって、戦争は長引き、兵站や士気にも陰りが見えてきている。もちろん、欧米諸国が一枚岩になってロシアへの非難を強め、それがプーチンの焦りにも繋がっているのだろう。
ただ、それだけではない。ウクライナが抵抗を続けるための武器になっているのが、インターネットやソーシャルメディアによる情報発信だ。
ゼレンスキー大統領はビデオカンファレンスを用いて、各国の議会で演説をしてきた。3月23日には日本の国会で戦時下にある自国の窮状を僕らに向かって訴えたのも、強く印象に残っている。かつての戦争であれば、このように、当事国のトップがリアルタイムで国際社会の人々に直接、メッセージを送ることは難しかったに違いない。
アメリカ議会で「パールハーバー」に喩えたことなど、発言について議論もあるだろう。ただ、まず前提として想像するべきなのは、ウクライナでは目の前の建物にミサイルが撃ち込まれ、多くの民間人が犠牲になっているという現実だ。僕個人の感想としては、モニターに映る彼の姿と言葉には、現状に対する切実さを強く感じずにはいられなかった。
軍事用の通信網がルーツ
ロシア側から見れば、ウクライナの情報戦を広げないように、通信・情報網を遮断したかったに違いない。しかし、そもそもインターネットは軍事用に開発された通信網ARPANETをルーツに持つ。動画や音声など全てのデータをTCP/IPという同一の規格で送っている。どこかがガチャンと切られても、別のルートを通じて繋がっていけることが強みだ。ロシアがウクライナ国内の情報を、自らに有利なようにコントロールすることは不可能に近い。
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source : 週刊文春 2022年4月21日号