アフリカで暮らした小学生の頃、空想や“セルフ発表”に没頭して、のんびりと育ちました。|楠木 建

新・家の履歴書 第779回

樺山 美夏
ライフ ライフスタイル

(くすのきけん 経営学者。1964年、東京都生まれ。一橋ビジネススクール国際企業戦略専攻(一橋ICS)教授。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に『ストーリーとしての競争戦略』『経営センスの論理』『戦略読書日記』『好きなようにしてください』『すべては「好き嫌い」から始まる』などがある。)

 

 小学生の頃に暮らしていた南アフリカにはテレビ放送がなかったので、自宅の庭に寝転んで雲を見ながらよく空想に耽っていました。読み飽きた児童書の続きを自分で創作して本にする“セルフ発表”が好きで何冊も作りましたね。もともと発表体質で、昔も今もやっていることは変わりません。ただ、子どものころは誰も読んでくれないセルフ発表だったのに、今ではオーディエンスがいる。ありがたく幸せなことです。

 30万部を超えるロングセラー『ストーリーとしての競争戦略』などの著書がある経営学者の楠木建さん。1964年、機械部品会社に勤務していた父と、銀座の医院のお嬢様として育った母の間に東京都目黒区で生まれた。父がアフリカ支店長として赴任したため、両親と3歳下の弟と共に南ア最大都市のヨハネスブルグで育った。現地の日本人学校は日本人の先生が自宅を開放した寺子屋のような学校だった。

 父が23歳のときに1歳上の母と結婚、翌年、僕が生まれました。当時の父は仕事より生活をエンジョイするタイプ。オープンカーに乗って母と(港区麻布の)飯倉にある「キャンティ」でデートしたり、アイスホッケーなどが趣味で、享楽的で活動的な人でした。僕とは正反対です。

 最初の家の記憶は、ヨハネスブルグです。藁ぶきの三角屋根に煙突がある立派な家でした。2階に両親の寝室と僕と弟の部屋が、1階には暖炉がある大きな居間と食堂、来客用の寝室が二部屋ありました。芝生の広い庭で日本人学校の同級生を集めてホームパーティーをした写真が残っています。裏庭には住み込みのメイドさんの住居(サーバントクオーター)がありました。

 朝起きるとメイドさんに「朝ご飯は何にしますか?」と聞かれて1日が始まるんです。学校が終わって帰宅すると、ラジオから流れてくるモータウンの曲に合わせてメイドさんと踊ったり、空想や“セルフ発表”に没入する。ひたすらのんびりと育ちました。

アフリカとは違った日本の学校。「エルヴィスになりたい」から学者の道へ

 帰国したのは小学校高学年のとき。父が川崎市鷺沼(さぎぬま)に建てた5LDKの一軒家で新しい生活が始まった。

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source : 週刊文春 2022年4月28日号

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