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「心の中にずっといます」|佐久間宣行

ナンシー関と私

「週刊文春」編集部
エンタメ 芸能

(さくまのぶゆき 1975年、福島県生まれ。テレビプロデューサー。99年にテレビ東京に入社。2019年からラジオ「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」のパーソナリティも担当。21年に独立。最新刊に『佐久間宣行のずるい仕事術』。)

 

 ナンシーさんが亡くなったとき、僕はAD3年目。深い喪失感を覚えました。僕の作った番組を見て欲しかったのに、間に合わなくて本当に悔しかった。僕がプロデュースした「ゴッドタン」や「ピラメキーノ」といった番組をナンシーさんだったらどう見たかというのは、ずっと気になっていましたね。

 ナンシー関は、僕の人生に決定的に影響を与えた人の一人です。芸人さんは「ダウンタウンの呪縛が解けない」とよく言いますよね。好きすぎて、自分のオリジナリティを確立するのに時間がかかる。テレビ好きな僕にとって、そういうあまりにも大きな存在だったのが、ナンシーさんでした。

 福島県いわき市で生まれ育ち、中高生の頃から東京のカルチャーに憧れがあって、雑誌をものすごく読んでいたんです。ナンシーさんの「小耳にはさもう」をはじめ、連載コラムが充実していた「週刊朝日」も購読していましたね。『何様のつもり』といった「何」シリーズなど、著書もほぼ揃えて読んでいました。

 ひねくれていて、テレビや芸能界の裏側ばっかり知りたがっていた僕に、テレビは見えるものだけでもこんなに豊穣で面白いという楽しみ方を教えてくれた。周りに読んでいた人はいなかったから、誰にも話さなかったけど、もう宗教みたいなものでしたね。

 上京して大学に入ってから、ナンシーさんと、リリー・フランキーさんや石丸元章さんが、新宿富久町のロフトプラスワンでやっていたトークライブにも行きました。今でもこんな話を覚えています。ナンシーさんがあるタレントの顔の特徴について書いたら、その人のファンから抗議が来た。ナンシーさんは「本当のファンなら、集団心理でそういうところまで見えなくなるのはおかしいだろ。それでも好きだと言うべき」と語って、強引だけどその通りだと納得しました(笑)。

 イベントの最後にサイン会があり、泉ピン子さん、ともさかりえさん、TRFという三つのハンコの中から、TRFを選んでルーズリーフに押してもらって。部屋の壁に飾っていました。

 ナンシーさんは、画面に映る姿を通して、その人のどうしようもない見栄や虚栄心、悲しみのようなものを見抜いていくんです。その“看破”の仕方が気持ちよかったし、面白かった。

 もう一つ教わったのは、テレビや芸能人のイメージ、作り手の意図を鵜呑みにするのではなく、疑い、自分の頭で考えるということ。それがあったから、僕は人とは違う番組が作れてきたような気がします。

 今のテレビには、ナンシーさんがずっと見続けるほどの吸引力があるのかな、と正直思います。あの頃のテレビには派手なものから猥雑なものまでなんでもあったけど、今はそうとは言えないですね。今も生きていらしたら、YouTubeや他のコンテンツに気持ちが移っていたかもしれない。

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source : 週刊文春 2022年5月5・12日号

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