グローバル企業は、どんな企業も英語で話す――2010年、楽天グループの社内公用語を英語にすると決めた狙いはこの一点に尽きた。人口減少が進む日本の企業が今後生き残っていくには、世界進出が不可欠。英語公用語化とは「楽天は本気でグローバル企業になる」というメッセージでもあった。
AppleのiPhoneを見れば分かる通り、世界のイノベーションは、様々な技術を組み合わせて新たな価値や市場を作ることへと置き換わっていった。生き残るためにはグローバルなコミュニケーション能力が必須であり、英語力はその土台。日本の成長が止まったのは、国家レベルで英語力を鍛えようとしなかった姿勢と決して無関係ではないと思う。
英語公用語化には当時、多くの賛否両論が寄せられた。「日本人同士で英語を話しても無意味だ」「一部の英語が必要な部署だけでいいのではないか」といった批判も耳にしたし、呆れたのは、「日本語を捨てるつもりか」とか「日本文化を蔑ろにするな」といった声すらあったことだ。
企業の公用語を英語に変えることが日本語や日本文化を蔑ろにするという意味が分からない。英語はあくまでグローバルビジネスを展開するための手段であり、英語が世界のビジネスの公用語になっているのだから、それを全員が使えるようにするのがビジネス戦略として正しいというだけの単純な話である。
英語力は日本語能力を低下させないし、日本の魅力を世界に伝える重要な手段でもあるはずだ。
だが一方で、こうした声が根強く残っているところに、日本の英語教育の病理があるとも感じる。
誰でも1000時間で
僕自身が学校で受けた教育を思い返してみても、日本での授業は子どもたちを「英語でのコミュニケーション」から遠ざけようとしているかのようだった。英語をきちんと話せない教師、動詞の時制やbe動詞の変化にこだわり、英訳や日本語訳をひたすら子供たちに課す手法……。おかしなルールもたくさんあった。日本人が英語を自由に話せるようになると、既得権益を奪われる人々がいて、彼らが「言語鎖国」のような政策を継続しているのでないか、と訝りたい気持ちにもなるほどだ。
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source : 週刊文春 2022年5月19日号