パーソナルスタイリストになりたての頃、まだ娘も小さく、よくベビーカーに乗せてショッピング同行のためのショップリサーチをしていました。その姿を見た顔馴染みのベテランの販売員さんが、仕事もおぼつかない私がもどかしかったのか「見ててあげるから、リサーチいってらっしゃい! 欲しいアイテムはこちらで準備しとくから!」と言ってくださり、本当に有り難かった事を覚えています。
当時、スタイリストになりたての私は、プライドを持って働く販売員さんの迫力に圧倒されっぱなしでした。そんな方々のプロとしての本物の接客やホスピタリティーを沢山目の当たりにしてきたので、今やすっかり販売員さんに向けるジャッジの目が細かくなってしまったことは否定できません。ただ、私達パーソナルスタイリストは、ショップにお邪魔し、お客様にコーディネート提案をするのが仕事。販売員の方の協力なくしては成立しません。尊敬でき、お客様が一人でショッピングに行っても安心して対応して頂ける方とお仕事をご一緒したいと思うと、自ずとショップの中でも「この人プロ!」と思える方を選んで声をかけてしまいます。
私がお仕事をご一緒したくなる販売員さんのタイプには2種類あり、名前をつけるなら「意見尊重型」と「コーデ提案型」です。
たとえば、「意見尊重型」の販売員Aさんは、いつも程よい距離感で作業をしながら見守ってくれていて、必要なタイミングで必ず目が合います。「ここのショップに関しては任せて!」という博識さを持ちながら、押しつけることはなく柔軟です。一方、指定したもの以外にも想像以上のアイテムを持ってきて一緒にコーディネートを作ってくれるのは、「コーデ提案型」のBさん。どちらのタイプの販売員さんも、こちらのニーズをしっかり観察し、聞いています。私が試着室内でつぶやいたサイズや色がさりげなく準備されていた時は、本当にプロだなと思いました。
誰でも、自分が主人公でありたいし、自分の事をわかってくれる人に接客してもらいたい。それを理解し、労力を惜しまずお客様にもショップの洋服にも愛情を注いでいるのを感じると、きっと嘘のない接客をされる優れた販売員さんなのだろうなと感じます。
他に私がどんなところを見て声をかけているかを挙げると、服の扱い方です。ショップ内でのディスプレイの仕方や、購入後の洋服の扱いが丁寧なら、ブランド愛を感じます。
質問すると、ストック(在庫置き場)の内容を把握していたり、ショップをまたいで提案できる人も頼もしいです。「そういうパンツをお探しなら、向かいのお店にありますよ」と連れて行ってくださった方もいました。トータルで何が一番お客様にとって良いかという事を考えた行動で、信頼でき、通いたくなります。そんな素敵な販売員さんに出会えたら、こちらも「こういう感じにしたい」など、リクエストを伝えたり、手持ちのアイテムの写真を見せたりできるといいですね。より力になれると、腕まくりされると思います。
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source : 週刊文春 2022年5月19日号