コロナ禍が本格化する直前の2020年初頭に、ソフトバンク・王貞治球団会長がプロ野球16球団構想を語り、新しい本拠地候補として沖縄を挙げたことがあった。この王構想に乗っかる形で、一部の人々が沖縄プロ野球球団構想を煽り立てていたが、現実問題としてはこの構想がほぼ実現不可能な事は、関係者の間では“常識”でもあった。

 理由は台風だ。沖縄は8月から10月にかけて毎年、いくつかの台風の直撃を受ける。台風が来れば試合ができないだけではない。飛行機も飛ばず、次の試合地への移動もままならない。9月から10月はただでさえ過密日程なのに、スケジュールを消化できずに、優勝争いにも影響を及ぼす危険性があるからだった。

 しかしその一方で沖縄は高校野球人気も高く、しかも石垣島も含めてプロ野球9球団がキャンプを張り、野球熱の高い地でもある。特に最近は県出身のプロ野球選手の台頭が目立ち、人口10万人当たりの選手輩出数は全国トップクラスとなっている。

 そんな沖縄勢の躍進を象徴する試合が、5月17日から沖縄セルラースタジアム那覇で行われた西武対ソフトバンクの2連戦だった。

 初戦先発の西武・與座海人(26)、ソフトバンク・東浜巨(31)両投手はいずれも地元出身。また西武は四番の山川穂高内野手(30)に平良海馬投手(22)、また2戦目にはソフトバンクの嘉弥真新也投手(32)に又吉克樹投手(31)と、沖縄出身選手が大挙して出場したのである。

「ひと昔前の沖縄出身の選手といえば身体能力が高い一方で、性格的にのんびりしていて大成できないというのが定説でした」

 こう語るのはある球団のスカウトだ。

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source : 週刊文春 2022年6月2日号