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父の闘病で出会った「医療」の世界|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第45回

三木谷 浩史
ビジネス 企業

 僕の父・三木谷良一は、2013年11月にすい臓がんで亡くなった。83歳だった。がんが見つかった時はすでにステージ4。2012年秋に医師から「あと3か月」と伝えられた時は、「そんなバカな……」と途方に暮れたことを覚えている。

 当時、父は「あと3年くらいは、生きたい」と思っていたようだ。僕は経済学者だった父からは多くのことを教わり、経営者になった後も、彼の存在に支えてもらってきたという思いがある。ただ、すい臓がんの治療はとても難しいと言われる。その後、できる限りの治療を模索したものの、様々な抗がん剤治療を受けた後、告知からおよそ1年後に亡くなった。

 そんな父の闘病によって、僕がこれまでのキャリアの中で初めて出会ったのが、「医療」という分野だった。

 ただ、父の病気が分かった時、僕には「医療」の世界に関する知識が全くと言っていいほどなかった。経済のことは学者だった父と議論するほどになっていても、がんについては詳しいことは何も知らず、それこそ「抗がん剤とは何か?」「放射線治療ってどういうもの?」というレベル。病気や治療のメカニズムもよく分かっておらず、基礎的な教科書を買い込んで読むところから勉強を始めた。

 そうやって一通りの知識を身に付けつつ、とにもかくにも始めたことがあった。それは、「足」を使って世界中を回り、最先端のがん治療の情報に触れることだった。

 そんなふうに「足」を使って動き回るのは、「新しいこと」に向き合う際、僕が大事にしている姿勢の一つだ。楽天グループを創業し、「インターネット」の世界に飛び込んだ時もそうだった。

世界中を飛び回った

 ECサイトの楽天市場を作る際、僕らはインターネットについて全くの“素人”だった。そんななか、基礎的なテキストを読んでシステムを作り、営業ではとにかく日本全国を這いつくばって回ってみる。何も手元には持ってはいなかったけれど、活動量と運動量だけは誰にも負けない。そんな思いを胸に経営を前に進めようと必死だった。

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source : 週刊文春 2022年6月9日号

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