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インターネットと同じような衝撃|三木谷浩史

三木谷浩史「未来」 第46回

三木谷 浩史

連載

ビジネス 企業

 2013年に入った時期だっただろうか、がんを患った父・三木谷良一の治療法を探して、論文を読み漁ったり世界中の名医らに会ったりしていた頃、1本の電話が入った。

「お役に立てるかもしれません」

 ワッフル・ケーキ専門店「R.L(エール・エル)」を経営している新保哲也さんだった。「R.L」は楽天市場の創業時から出店してくれているお店。彼もまた、インターネットの黎明期に共にビジネスを拡大させようとした戦友のような存在で、父とも旧知の間柄だ。その新保さんの従弟がアメリカでがんの治療法を研究しているという。

 その従弟の方こそ、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の主任研究員、小林久隆さんだった。いま振り返れば、“人の縁”というものの大事さを感じずにはいられない出会いだったと思う。

光免疫療法を開発した小林久隆さん(右)

 小林さんは、放射線診断や核医学などの専門家。その彼が研究していたのが、「光免疫療法」と呼ばれるこれまでにない新しいがんの治療法だ。僕が特に興味を抱いたのは、その治療法が当時のオバマ大統領が2012年の一般教書演説で披露した「キャンサー・ムーンショット・プロジェクト」の一つとして言及されていたからだ。

 1960年代の「アポロ計画」の名前を借りたキャンサー・ムーンショット計画は、がん研究のスピードを5年間で倍の速度にするというプロジェクトで、当時のバイデン副大統領が中心になって策定されたと言われている。このプロジェクトには、まさに医療分野における「未来」、例えば最新の画像化技術や薬剤送達デバイスといった最先端技術への支援などが盛り込まれていた。

 僕は、当時病状が芳しくない父の治療法を探すため、藁にもすがる思いで小林さんにアポイントをとった。

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source : 週刊文春 2022年6月16日号

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