今年4月、春の気配が色濃くなってきた季節のことだ。
僕は車で九州のある都市の病院に向かっていた。楽天メディカルが実用化した「光免疫療法」について、医師とカンファレンスを行なうためだった。
日本では普段、ほとんど自分で車の運転はしない。でも、その日はとても天気が良く、久しぶりにハンドルを握りたくなった。レンタカーを空港で借り、2時間ほどの道のりを秘書や担当者を乗せて運転していると昔の思い出が蘇ってきた。
25年前、ECサイトの楽天市場を開設した時のことだ。プログラミングの教科書を見ながらシステムを一から構築し、出店してくれる人たちを見つけるために、創業メンバーと一緒に日本全国を駆け回った。
「今はまだインターネットショッピングはほとんど使われていないけれど、必ずこの世の中に普及する。より楽しいショッピングができるようになる。素晴らしい商品やサービスを日本中に提供しましょう」
そんなふうに懸命に事業への想いを伝えて歩き、一人ずつ出店者を増やしていく。それが、楽天グループの最初の一歩だった。
2022年の今は、楽天メディカルが取り組む光免疫療法を提供している日本全国の病院を回っている。あの当時、ネットの未来に懐疑的だった人々を説得して回った時の思い出が胸の裡で甦ってくる。
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source : 週刊文春 2022年6月23日号